『なぜ大国は衰退するのか』を斜め読みする。

まずは、紀伊国屋書店サイトに掲載された書籍情報である

https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784532198992

日経ビジネス人文庫
なぜ大国は衰退するのか―古代ローマから現代まで

原題、出版社、出版年:BALANCE: The Economics of Great Powers from Acient Rome to Modern America, Simon and Schuster, 2013.

翻訳版出版社、出版時期:日経BPM(日本経済新聞出版本部)(2019/06)

内容説明

大国衰退の根本的な原因は何か?ローマ帝国、明朝中国、スペイン、オスマントルコ、大英帝国、EU、日本、米国それぞれの成功と失敗、発展の限界を行動経済学、制度経済学、政治学をベースに読み解く。経済的不均衡が文明を崩壊させ、制度の停滞が衰退をもたらすことを明らかにする。

出版社内容情報

■ローマ帝国、明朝中国からオスマントルコやスペイン帝国、大英帝国にいたるまで。世界の大国はその時代で最大の経済力、政治力、軍事力をもつ国として登場したが、最終的には衰退してしまった。こうした大国の衰亡の根本的な原因は何なのか?
■ふたりの経済学者が、歴史上および現代の大国の興亡を、行動経済学、制度経済学、政治学をベースに読み解き、経済的不均衡が文明を崩壊させ、経済的な衰退は制度の停滞によって生み出されることを明らかにする。そして、米国が次に同じ運命をたどる可能性があり、現代日本も、明治維新以来、第二の衰亡か再起かの分岐に直面していると、警告する。
■大国の経済力を測るこれまでにない斬新な方法を提示、ローマ帝国、明朝中国、スペイン帝国、オスマントルコ帝国、日本、大英帝国、ユーロ圏、現代カリフォルニア州、米国それぞれの成功と失敗、発展の限界をつぶさに分析。ポール・ケネディ『大国の興亡』の「帝国が拡大しすぎが衰退の原因」との主張を退け、経済の不均衡を解決できない国家の政治的停滞こそが衰退の原因であることを明らかにする。
■歴史上の大国はなぜ没落したのか? 現代の大国が生き延びる道はどこにあるのか? 日本は没落の危機を免れるのか? 歴史に経済理論の光をあてて描「大国の経済学」。

著者等紹介

ハバード,グレン[Hubbard,Glenn]
米コロンビア大学大学院ビジネススクール院長。大統領経済諮問委員会委員長、米国財務省副次官補(1991~93年)を歴任。

ケイン,ティム [Kane,Tim]
米ハドソン研究所主席エコノミスト。米国連邦議会上下両院合同経済委員会委員を2回務め、情報将校として米国空軍に在籍(1990~95年)。

久保恵美子
翻訳家。東京大学経済学部卒業。ノンフィクション翻訳をおもに手がける。

まずは、古代ローマ帝国が滅亡したのは、直接的には戦争に負けたからであるが、根本的には経済政策の破綻が原因であると論じている。続いて、中国、オスマントルコ、大英帝国などの衰退の原因をケース分析し、米国や日本が同様に衰退する怖れがあると警鐘を鳴らしている。

本文だけで500ページに及ぶ大著であるため、主要各国の衰退の原因として著者がまとめているポイントを列挙したい。

  • ローマ帝国
    • 転換点:117年~317年
    • 経済的不均衡:財政面、金融面、規制面
    • 政治的な要因:福祉国家の拡大、中央集権化した統治、軍事独裁
    • 行動面での機能不全:インフレや自由労働市場が極端化した状況における限定的合理性。ローマ軍の集合行為の問題。
  • 帝政期の中国
    • 転換点:15世紀
    • 経済的不均衡:対外貿易の大幅な縮小
    • 政治的な原因:中央集権的な統治、独裁的な政策立案、官僚の内部分裂
    • 行動面での機能不全:ゼロサム型思考に陥った官僚による損失回避、商人・利得・外国の知識を敵視するアイデンティティ面でのヒューリスティック、経済成長にとっての貿易の重要性に関する無知
  • スペイン
    • 転換点:1550年
    • 経済的不均衡:財政赤字と国家の破産、不適切な財産権
    • 政治的な原因:中央集権的な君主制
    • 行動面での機能不全:ギルドの損失回避行動の固定化、生産性向上の機会の本質に関する限定合理性
  • オスマントルコ
    • 転換点:1550~1600年
    • 経済的不均衡:財政面、技術面
    • 政治的な原因:政府の中央集権化、神権政治、官僚階級のレント・シーキング
    • 行動面での機能不全:ゼロサム型思考に陥った官僚による損失回避、外国のアイデアを敵視するアイデンティティ面でのヒューリスティック、経済成長にとっての技術の重要性に関する限定合理性
  • 大英帝国
    • 転換点:1770~1780年
    • 経済的不均衡:領土面
    • 政治的な原因:英国の階級的・地理的エリート層による損失回避
    • 行動面での機能不全:英国市民権を与える範囲が狭すぎ、市民と被統治者を区別した
  • EU
    • 転換点:2010年~?
    • 経済的不均衡:財政面
    • 政治的な原因:抑制なしの財政赤字と安易な借り入れ、準主権国家のモラル・ハザード
    • 行動面での機能不全:選挙で選ばれた当局者の時間的視野の狭さ、損失回避、文化的優位性のヒューリスティック
  • 日本
    • 転換点:1994年
    • 経済的不均衡:財政面、構造面
    • 政治的な原因:特定利益集団や中央集権的ま官僚制に比べて脆弱な民主制
    • 行動面での機能不全:新重商主義を経済成長策とするヒューリスティック、大規模な銀行や企業による損失回避

私なりに再整理すると、「中央集権による政策推進や官僚や事業主体による損失回避は、国家のリスクを回避するために必要な行動と思われがちだが、長期的な視野や海外の技術や文化の重要性の理解がより重要であり、独裁者や官僚的前例主義やポピュリズムを排除しなければ、どんな大国でも没落してしまう」ことを肝に銘じるべきなのだ。

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